木漏れ日の中眠る貴女はまるでおとぎ話の姫君。
俺以外の人間の目に触れないよう、出来る事ならこの部屋ごと閉じ込めてしまいたい。
静かに扉を閉めて白いレースのカーテンの中で眠る、愛しい女性の元へ近づく。
いつものように側に置いてある椅子に座り、そっとその寝顔を覗き込む。
(今日は随分顔色がいいみたいだな。)
生まれつき身体が丈夫ではない彼女は、少し無理をすると暫くベッドから起き上がれなくなってしまう。
先日、ハルヒ達を屋敷に招いた時に少々無理をしてしまったようだ。
(・・・全く、いくらが望んだとは言え少し無謀だったな。)
取り出した経済学の本を開きながら、この間の事を振り返っていると・・・眠っていたはずの彼女の睫毛が微かに震え、黒曜石のような瞳がうっすら開いた。
――― 俺の心を捕らえて離さない・・・至高の宝石
そして、さくらんぼのような小さな口からは、まるですんだ鈴の音のような声が鳴り響く。
「・・・いらしてましたの?」
「えぇ、つい先程・・・」
開いたばかりの本を閉じて脇によけ、差し出される手をそっと握る。
少しでも力を入れてしまえば壊れてしまいそうな、細く繊細な・・・指。
「起こして下されば良かったのに・・・」
「貴女の寝顔があまりにも美しかったので、つい声をかけそびれてしまったんです。」
「・・・今度は、起こして下さいませね。」
・・・軽く握り返された手。
だがその顔は握り返された手とは反対に、頬は僅かに高潮し瞳は微かに揺らいで見える。
本当に貴女は・・・どうしてそんなに美しいんだろうか。
「・・・何故です?」
自然と零れる笑みを堪えきれず、そんな彼女と目をあわせて話せば・・・微かに聞える恥じらいの声。
「折角鏡夜様がいらして下さっているのに、眠っているのは・・・嫌です。」
「・・・分かりました。次からは善処します。」
「起こして・・・下さいませんの?」
ベッドに横たえていた身体を起こそうとするので、すぐにその背を支える。
起き上がった彼女の肩にジャケットを脱いでかけ、安心させるかのように微笑む。
「貴女を見ていると、つい時間が経つのを忘れてしまうんです。」
以前の俺なら頼まれても口にしない台詞も・・・貴女の前なら自然と零れてくる。
家が決めただけの婚約者だったはず
だが、今は貴女以外の人間を妻に迎える気は・・・全くない。
彼女の体調が良い様子だったので暫く話をし、登校時間になったのでジャケットを返してもらいそのまま彼女をベッドへ寝かせた。
「・・・鏡夜様。」
「はい。」
「今度・・・庶民コーヒーを買ってきて下さいませんか?」
彼女の口から出た思いがけない言葉に少なからず驚いて、思わず聞き返す。
「すみません、今なんと?」
「ですから庶民コーヒーを買ってきて頂きたいんですが・・・高価な物なのでしょうか?」
「いえ、そんな事はありませんが・・・何故突然その様な物を?コーヒーが飲みたいのでしたら俺が最高級の豆を空輸して・・・」
滅多に何かを欲しがる事のない彼女がそんな事を言うなんて・・・すぐに電話で取り寄せねば。
そう思い部屋に備え付けられている電話に手を伸ばせば、彼女の手がそれをやんわりと押しとどめた。
「この間、ハルヒ君に庶民コーヒーはお湯を注ぐだけで出来ると伺いました。」
「えぇ・・・確かに。」
部室で何度も実験したし、俺自身も体験したからそのことは知っている。
だがどうしてがそんな物を欲しがるだろうか?
そう思いながら彼女の方へ視線を向けると、顔を半分ほど隠すくらいまで引き上げた布団で口元を隠しながら何か呟いた。
「庶民コーヒーならば寝たきりの私でも鏡夜様にお茶をお出し出来るのでは・・・と思ったものですから・・・」
側にいるのに聞き取れないくらいのか細い声。
・・・そんな気を使わなくてもいいのに。
貴女は何処まで優しいんだろう。
「貴女が入れてくださるなら最高級のブルーマウンテンの味がするでしょうね。」
「初めてですからどうなるかわかりませんが・・・」
「分かりました。帰りに買ってまいりましょう。」
「ありがとうございます、鏡夜様。」
「ですがその代わり約束してください。」
椅子に置いたカバンを手に持って、別れを告げるためベッドサイドへ近づく。
疑いもなく俺を見上げる眼差しは・・・澄んだ泉のように透き通っている。
「帰ってきたら、名前を呼んで下さい。」
「お名前?鏡夜様の?」
「えぇ。」
「私いつもお呼びしていますが・・・」
確かに貴女の可愛らしい唇から俺の名は何度も呼ばれています・・・が、それは違う。
「俺の名前は『鏡夜』であって『鏡夜様』ではありませんよ。」
「・・・あっ」
口元を押さえて僅かに頬を染める彼女の手を取って、その甲に唇を寄せる。
「それでは行ってまいります・・・。」
「行ってらっしゃいませ・・・鏡夜・・・様。」
「帰ってきた時には是非、その鈴のような声で俺の名を呼んで下さい。」
ニッコリ笑って立ち上がると、は今まで以上に頬を染めながらも小さく頷いてくれた。
さて、学校に着いたらハルヒに庶民コーヒーの売場を教えて貰わねばなるまいな。
今日も環はハルヒの周りをうろつくだろうから、少し雑務を与えて引き離すか・・・ハニー先輩方は問題無いとして、あとは・・・双子か。まぁそのくらいなんとでもなるだろう。
愛しいの初めての願い、誰にも邪魔させはしない。
帰ってきたら二人でお茶を飲みましょう。
誰も邪魔をしない甘いひと時を・・・
貴女の入れてくれた、極上の、最高級のコーヒーと共に・・・
・・・100000hit祝いに書いた事のないドリを書いてみようv
と熱で沸騰した頭はこんな企画を考え、それにのって書いたのがこの話。
ついて・・・来てくれる人いるのか不安な今日この頃(ポソリ)
えっと・・・桜蘭高校ホスト部、副部長:鳳鏡夜先輩ドリーム(爆笑)
もともとこの話は好きで、単行本も買ってるんですが・・・この話を書くきっかけとなったのが、香原さんが貸してくれたホスト部CDv
ギリギリまでどうしようか悩んでて応募しなかったんですが、香原さんが応募していて貸してくれました。
―――――― 間 ――――――
あー面白かった(爆笑)豪華なキャストでしたわ♪
(以下、この話を知らない人にはどうでもいい話(笑))
環は緑川さんだし、ハニー先輩はピカチュウだし(おいっ)モリ先輩は乾先輩だし(おいっ2)鏡夜先輩は跡部だし(お〜い)
・・・(でもやっぱ個人的に鏡夜先輩は石田さんにやって貰いたかったなぁ・・・(ポソリ))
そして私は保志さんでした、じゃなくて!常陸院兄弟の兄:光は保志さんで弟:薫は鈴村さんでした。←この二人のハモリ具合が最高です!!
鏡夜先輩はこの話のように甘い台詞など吐きゃしません(キッパリ)
金が絡むか何らかの利益が絡めば多少何か言ってくれるかもしれないと言う人です。
(だって本編でナレーションを他の人に譲るって事になった時「550円で提供されるCDで、俺がそこまで働く必要性は?」と言うような人ですぜ(笑))
でもこのCDのラストに『至福のお休みメッセージ集』と言うのがあって珍しく彼が口説いてくれています。
で、彼が何の利益も無しに砂を吐く様な相手がいたら面白いなぁと思っていたら出来たのがこの話(チャンチャン♪)
風見の砂吐き台詞の限界点はこの話みたいです。これ以上恥ずかしい台詞、今は書けねぇ(苦笑)